死の壁

死の壁 (新潮新書)

死の壁 (新潮新書)

養老孟司さんの壁シリーズ2作目。「バカの壁」に引き続き読んでみた。
我々現代人は、都市化により、肉親の死でさえも、できるだけ日常生活から遠ざけてしまったが故に、自らを死なないものと勘違いしてしまい、自らが死ぬことは100%間違いないことなのに、かえって恐ろしがるようになってしまったものらしい。
それが、例えば、臓器移植を扱う脳死臨調などで、死の定義自体が日本人の中でこれまで曖昧にしてきたものを明文化しようとして、綻びが出てしまったりしており、死生観自体がある種の共同体の中での暗黙の合意に基づく文化の一部のため、靖国問題でさえも、中国の死生観との違いによって生じたものとする。
死というテーマにしては、暗い話ばかりでなく、自分の死体自体、死んだ自分には認識できない訳で、そんなものに悩んでも仕方がないと明快だが、「バカの壁」ほど面白い本ではなかった。