千年、働いてきました

ノンフィクションライター野村進さんの本。どうも日本には創業百年以上の会社が十万社以上もある老舗大国のようだ。これは、世界的に見てもあまり例がないらしい。もともと植民地化を逃れ、安定した国勢が続いたことや職人を尊ぶ文化(いわゆる華僑には、血族を重視する商人気質のところがあり、意外と老舗企業は少ないらしい)がその老舗を育む基盤となったということのようだ。
本書では、老舗の製造業の技術がケータイにいくつも組み込まれていることが紹介されており、老舗=伝統に凝り固まった官僚的な組織ではなく、長期間に亘り生き延びることができた組織として、

  1. 同族経営が多いが、「老舗の土台を築くのは三代目の養子」と言われるように、外からの人材も取り入れる
  2. 時代の変化に対応しつつ、コアな部分には愚直なまでに守り抜く
  3. 身の程を弁え、コア・ミッション以外の分野には手を出さない
  4. 三世代同居等により、「町人の正義」とも言うべき文化がDNAの如く伝承されている

というような特徴が見られたとのこと。
それでも、バブル崩壊後の不景気で老舗が続々廃業しているのも事実であり、老舗の頑固強さと逞しい新興企業の活躍が今日本に求められているのかもしれない。